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2026/04/21
日本におけるオンライン遺伝診療の普及に向けた課題と展望を解明 ~患者と医療者の意識調査から見えたギャップと今後の可能性~
植野さやか訪問研究員(藤田医科大学先端ゲノム医療科准教授)、平沢晃教授らの共同研究グループは、遺伝性腫瘍症候群に対するオンライン遺伝診療の障壁と促進要因を明らかにするため、全国アンケート調査を実施しました 。本研究成果は、2026年4月21日に国際医学雑誌「International Journal of Clinical Oncology」にオンライン掲載されました 。本研究は、文部科学省の科学研究助成事業(21K19667、24K02589)及び厚生労働省の厚生労働科学研究費補助金(JPMH23EA1037)の支援を受けて行われました。
◆ 研究成果
•医療者のオンライン遺伝診療の経験割合は14.0%にとどまるものの、遺伝性腫瘍症候群診療に携わる医療者の85.9%が今後の提供に前向きであることが分かりました 。
•クライエント(患者や家族)の89.1%は、オンラインであっても遺伝カウンセリングの全内容を十分に理解・納得できると回答しており、高い受容性が示されました 。
•遺伝診療施設の選択において、クライエントと医療者の認識にズレがあることが判明しました (表1)。
表1 遺伝診療においてクライエントと医療者が重視する点

◆ 研究の背景と目的 遺伝医療における専門職の不足は、地域間のアクセス格差を引き起こしています 。オンライン遺伝診療はこの課題を解決する有望な手段ですが、日本での普及は限定的で、保険診療における「遠隔連携遺伝カウンセリング」は難病診療にのみ限定されています。本研究は、普及に向けた潜在的なニーズと障壁を特定することを目的としました 。
◆ 調査結果の概要 対面での遺伝カウンセリングを受けたクライエント443名と、医療従事者858名を対象に調査を行いました 。 医療者はオンライン上のコミュニケーションの質やクライエントのネット環境、セキュリティに対して強い懸念を抱いていました 。一方クライエント側では、高齢であることやインターネットの利用頻度が低いことが、オンライン診療への受容性の低さや不安の高さと関連していました 。
◆ 今後の展望 本研究により、オンライン遺伝診療はクライエントに受け入れられる可能性が高く、わが国における地域格差の解消、遺伝医療・がん医療の均てん化に有効であることが示されました 。今後は、医療者とクライエント間のニーズのギャップを埋め、デジタルディバイド(情報格差)を克服するための安全でアクセスしやすいシステムの構築と教育が求められます 。
◆ 論文情報
•論文名:Barriers and facilitators for online genetic care for hereditary cancer in Japan: findings from surveys of both clients and medical professionals
•掲載誌:International Journal of Clinical Oncology
•DOI:10.1007/s10147-026-03026-x