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教授挨拶
Professor Hirasawa

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2021(令和3)年1月 教授挨拶

臨床遺伝子医療学のホームページを訪れていただきありがとうございます。2018年に前任の豊岡伸一教授から講座を主宰を引き継ぎ、時代も平成から令和となってゲノム医療、遺伝子診療を取り巻く環境はこの2年半だけでも、急速に進んで来ました。

2018年には我が国のがんゲノム医療連携体勢の枠組みが定められ、当院ではゲノム医療総合推進センターをはじめとして院内外の皆様と、現在にいたるまで日々手作りで整備を続けています。この年はBRCA1/2遺伝学的検査がコンパニオン診断として導入されました。

2019年にはがんゲノム医療が保険診療化され本格的に始動しました。

2020年2月には第1回せとうち臨床遺伝研究会を開催しました。4月には遺伝性乳がん卵巣がん(hereditary breast and ovarian cancer: HBOC)に係る保険診療が、部分的ではあるもの開始しました。我が国の三木義男博士が1994年にBRCA1遺伝子を同定されてから実に4半世紀を経て一部保険診療化されたわけです。当院は厚生労働省が定めるHBOC保険診療施設の連携業務、一般社団法人日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構の認める遺伝性乳癌卵巣癌総合診療基幹施設としての役割が大きくなってきました。同時に新たに53疾患(72項目)の指定難病の遺伝学的検査が保険承認されました。

そして待望の臨床遺伝子診療科診療スペースが開設しました。医科外来診療棟2階の中心で院内で最も人通りが多いスポットです。遺伝子診療部門は全ての当事者・国民、そして院内の診療科・部門に活用していただく部門です。この地の利もいかして、ますます周知していただきたいと思います。

2021年から医学部医学科のカリキュラムにゲノム医療6時間(3年生)、行動科学3時間(2年生および3年生)がスタートします。平成28年改訂の医学教育モデル・コアカリキュラムでは遺伝医療・ゲノム医療に関する内容が充実されたため、今後の若手医療人にゲノム医療を伝えることが我々の使命であると認識しております。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延は、我々に医療ブロック化のリスクを教訓として与えることとなりました。「受診したい人のに受診することができない、医療者としては今声を届けたい人に受診してもらえない、家族と一緒に受診したいが家族は県外に住んでいるので来院できない・・・・」など、患者・当事者も医療者も共に悩み続けております。

我々は「中央西日本遺伝性腫瘍コホート研究」を立ち上げました。医療機関16施設(2021年1月現在:協力参加施設募集中)が協働した遺伝性腫瘍に対する取り組みで、地域医療としての遺伝性腫瘍診療を、地域の医療者・当事者とともに作ってまいります。遺伝性腫瘍エキスパートパネルを開催して、医療圏全体で長期に渡ってきめ細かく丁寧に支援する体制を作り、医療ブロック化リスクも回避します。

サグラダ・ファミリアは2026年に完成予定であるといわれていますが、我々はゲノム医療・遺伝子診療の最適化を目指して永遠に改善を続けて参ります。

2021(令和3)年 元日