遺伝性腫瘍
Hereditary tumors
遺伝性乳がん卵巣がん
(hereditary breast and ovarian cancer : HBOC)
HBOCとは
遺伝性腫瘍の中でも、遺伝性乳がん卵巣がん(hereditary breast and ovarian cancer : HBOC)は個別化医療によるがんの早期発見・治療・予防が可能です。乳がんや卵巣がんと聞くと、女性だけが関係すると思われることがありますが、男性乳がんや前立腺がん、膵がんにも関わるため男性も注意が必要です。
ここでは、HBOCの関連情報(HBOCの特徴、診断と対策、その後の対応、当院での取り組み等)についてご案内しています。
HBOCの要因
HBOCは,BRCA1 (ビーアールシーエーワン)またはBRCA2 (ビーアールシーエーツー)(BRCA1/2 )とよばれる遺伝子に、
生まれつきがんになりやすいという特徴(病的バリアントまたは変異といいます)を持っていることが原因です。
BRCA1/2 遺伝子は誰もが持っているもので、本来はがんの発生を抑えるように働きます。しかし、 BRCA1/2 の病的バリアントを生まれつきもっている人は、
乳がん・卵巣がん・膵がん・前立腺がんなどになりやすくなると考えられています。
HBOCの特徴
HBOCは関係するがんには、 下記に示すような様々な特徴があります
乳がん
- 乳がんと卵巣がんの両方を発症しやすい
- 一般的な乳がんと比較し、 若年で発症しやすい
- 反対側や両側に乳がんを発症しやすい
- 片方の乳房に複数回がんが発症しやすい
- 男性でも乳がんを発症する可能性が一般頻度に比べて高まる
- BRCA1が原因となる乳がんはトリプルネガティブタイプが多い1)
- BRCA2の場合、 通常の乳がん患者と同様にルミナルタイプが多い1)
卵巣がん
卵巣がん患者さんではBRCA1/2 の病的バリアントを持つ人の割合が多いため、BRCA1/2 遺伝学的検査を行うことが奨められています。とくに漿液(しょうえき)がん、 ステージⅢ期・Ⅳ期の進行症例が多いのが特徴1)
前立腺がん
BRCA2 の場合、 前立腺がんのリスクが2~6倍になる1)
BRCA2 が原因となる前立腺がんは遠隔転移やリンパ節転移の頻度が高い1)
膵がん
BRCA2 では、 膵がんのリスクが2.4~6倍になる1)
参考文献
1)遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)診療ガイドライン 2021年版
(https://johboc.jp/guidebook_2021/)