TOP

岡山大学学術研究院医歯薬学域 臨床遺伝子医療学分野のWebサイトです。

遺伝性腫瘍
Hereditary tumors

TOP 遺伝性腫瘍 リンチ症候群と関わる遺伝子の特徴が見つかった場合

リンチ症候群

リンチ症候群と関わる遺伝子の特徴が見つかった場合

対策

リンチ症候群の原因遺伝子に病気と関わる遺伝子の特徴(病的バリアント)を保持していることが分かった場合には、関連するがんに対する早期発見・早期治療につなげることができます。このように、遺伝子の特性に応じてきめ細く行う定期的な検査のことをサーベイランスといいます。
リンチ症候群のサーベイランスを表に示しています(表1,2)。
国内外のガイドラインを参考に、原因遺伝子や年齢、性別に応じたサーベイランスを行います。




表1 国内のガイドラインで推奨されているマネジメント1)

横にスクロールできます

部位 検査方法 検査開始年齢 間隔 コメント
大腸 大腸内視鏡検査 20-25歳 1-2年
子宮・卵巣 経腟超音波断層法、子宮内膜組織診
(または細胞診)、(CA-125)
30-35歳 1年
胃・
十二指腸
ヘリコバクター・ピロリ
感染確認の検査
30-35歳 感染あれば除菌
上部消化管内視鏡検査 30-35歳 1-3年 胃癌リスクの高い集団、または胃・十二指腸癌の家族歴がある場合に考慮
尿路 検尿(または尿細胞診) 30-35歳 1年 MSH2バリアント、または尿路上皮癌の家族歴がある場合に考慮

参考文献1より引用




表2 海外のガイドラインで推奨されているマネジメント2)

横にスクロールできます

がん種 検査方法 開始年齢 間隔 コメント・備考
大腸がん 大腸内内視鏡検査を推奨 MLH1/MSH2/EPCAM
:20~25歳から または家系内診断年齢が25歳未満の場合は2~5年前から
MSH6/PMS2
:30~35歳から または家系内診断年齢が30歳未満の場合は2~5年前から
MLH1/MSH2/EPCAM
:1~2年
MSH6/PMS2
:1~3年
子宮体がん 子宮内膜組織診を考慮
経腟超音波を考慮
30~35歳から
(経腟超音波は閉経後女性)
1~2年 リスク低減術:子宮摘出術を検討
PMS2はわずかにリスク上昇
卵巣がん 経腟超音波・CA-125検査を考慮 - - MLH1/MSH2/EPCAM
リスク低減術:卵管卵巣摘出術を個別に判別
MSH6:RRSOは十分な根拠がない
PMS2:サーベイランスの延期等の考慮
尿路上皮がん 尿検査を考慮 30~35歳から 1年 ※家族歴のある場合
MSH2の場合(特に男性)
胃がん
・小腸がん
上部消化管内視鏡検査を考慮
(初回検査時には、胃の近位部および遠位部のランダム生検を行い、
H.pylori自己免疫性胃炎、腸管形質転換の有無を評価)
ピロリ菌検査を勧める
30~40歳から 2~4年 ※上部消化管癌の家族歴や高リスクの内視鏡所見
(不完全または広範な胃腸管形質転換[GIM]、胃または十二指腸腺腫、異形成を伴うパレット食道など)がある場合:
サーベイランスを30歳より前に開始and/or間隔を2年より短くすることが考慮される
膵がん MLH1/MSH2/EPCAM/MSH6
造影MRI/MRCP and/or EUSを考慮
PMS2:-
MLH1/MSH2/EPCAM/MSH6
50歳または家系内診断年齢の10歳若い年齢
PMS2:-
1年 ※第一度または第二度近親に家族歴がある場合
PMS2で家族歴がある場合は慎重に評価
前立腺がん 前立腺癌スクリーニングを考慮 40歳 1年 ※遺伝子・家族歴に応じてリスク評価
乳がん - - - 一般的な乳がん検診
乳癌の既往歴・家族歴に応じた検診
脳腫瘍 症状あれば医師に相談 - - -
皮膚がん 皮膚所見の診察を考慮 個々に対応 1~2年 -

参考文献2を基に改編

参考文献

1)遺伝性大腸癌診療ガイドライン 2020年版
http://www.jsccr.jp/guideline/2020/hereditary_particular.html
2) NCCN Guidelines® Genetic/Familial High-Risk Assessment: Colorectal Version1.2023