概要
中央西日本遺伝性腫瘍コホート(Mid-West Japan Hereditary Tumor Cohort; MeJeTo)は、全国51の協力施設(2025年3月時点)を通じて臨床情報やDNAなどを収集しています。臨床情報には、遺伝性腫瘍症候群の当事者およびその家族が含まれます。評価指標としては、遺伝性腫瘍症候群関連腫瘍の罹患率、生存率、サーベイランス(遺伝情報に応じた定期的かつ綿密な検査)、リスク低減処置後のQOL、ゲノム疫学解析などが含まれます。疾患発生率やサーベイランス結果などを毎年追跡し、前向きに臨床情報を収集しています。検体やDNAは、氏名やその他の個人情報を除いて保存されています。本研究で収集された試料や情報は、ゲノム医学の進歩や新しい臨床的アプローチの開発を目指す他の研究者に提供されます。
研究目的
- 長期に渡ってきめ細かく丁寧に支援する体制を作っていくことで、最適な医療のためのエビデンスを構築します。
- このプロジェクトでは、遺伝性腫瘍エキスパートパネルなどの活動を通じて地域医療としての遺伝性腫瘍症候群診療の体制確立と維持を目指しています。
背景
がんの約1割は遺伝因子によって生じることが知られており、一般に「遺伝性腫瘍症候群」と呼びます。遺伝性腫瘍症候群の原因遺伝子を調べることで、がん予防に結びつけることが可能な場合があるものの、日本人のデータはまだ十分ではありません。遺伝情報はあなたの大切な情報ですが、あなただけのものではありません。遺伝情報は血縁者や地域で共有することでその意義が増すことがあります。
「がんに罹りやすい」という遺伝情報(遺伝性腫瘍の関連遺伝子)をきちんと調べることで、あなたのがん予防が可能になるだけでなく、血縁者の方にとっても、がん予防のきっかけにもなることがあります。遺伝性腫瘍の診療は「究極の地域医療・家庭医療」といえます。
本研究は、2020年12月に岡山大学病院を含む中国・四国地方を中心とした16施設が中心となって開始されました。この取り組みは、日本におけるがん予防のエビデンスを発信提供することで、国民の健康管理に役立つことを目指しています。


2025年3月現在
(倫理申請準備中の施設も含む)
研究グループでは遺伝性腫瘍の方とその家系を対象に、関連腫瘍発症率、生存率、マネジメントに関する評価、リスク低減手術によるQOL評価、およびゲノム疫学的解析等を行います。研究参加者に対しては、年1回の定期的な追跡調査で病気の有無や血液検査の結果などの臨床情報を確認し、血液や組織の長期保管が可能な「岡大バイオバンク」の設備やシステムを活用して保管し、将来的な研究・開発に役立てます。
このように、わが国での遺伝性腫瘍の基盤データを集積することで、臨床の現場での対応策を明らかにしていくことが可能になります。
用語説明

- 1)コホート研究:コホートとは「集団」を意味します。「コホート研究」とは研究対象者となる集団を将来にわたって長期間観察し追跡を続けることで、ある要因の有無が病気の発生または予防に関係しているかを調べる研究。
- 2)岡大バイオバンク:岡山大学病院では患者さんの生体試料と診療情報を管理 ・利活用して、一歩進んだ医療の提供を目指す、「岡大バイオバンク」を設置しています。
- 3)バリアント:遺伝子の特徴。遺伝子検査は,検査を受けた方の遺伝子と代表的な遺伝子を比べて「塩基配列や構造の違い(特徴)」を探すことを目的としています。その違い(特徴)はバリアントと呼ばれています。バリアントの中には,病気の原因となるものありますが,個人差の範囲に含まれるものもあります。
研究協力施設を募集しています
お問い合わせは下記へお願いいたします。
お問い合わせ先
岡山大学学術研究院医歯薬学域 臨床遺伝子医療学
教授 平沢 晃
電話/岡山大学病院 臨床遺伝子診療科 086-223-7151(代表)
Mail/cgm@okayama-u.ac.jp(医局)