遺伝性腫瘍
Hereditary tumors
リンチ症候群
リンチ症候群と関わる遺伝子の特徴が見つかった場合
対策
リンチ症候群の原因遺伝子に病気と関わる遺伝子の特徴(病的バリアント)を保持していることが分かった場合には、関連するがんに対する早期発見・早期治療につなげることができます。このように、遺伝子の特性に応じてきめ細く行う定期的な検査のことをサーベイランスといいます。
リンチ症候群のサーベイランスを表に示しています(表1,2)。
国内外のガイドラインを参考に、原因遺伝子や年齢、性別に応じたサーベイランスを行います。
横にスクロールできます
部位 | 検査方法 | 検査開始年齢 | 間隔 | コメント |
---|---|---|---|---|
大腸 | 大腸内視鏡検査 | 20-25歳 | 1-2年 | |
子宮・卵巣 | 経腟超音波断層法、子宮内膜組織診 (または細胞診)、(CA-125) |
30-35歳 | 1年 | |
胃・ 十二指腸 |
ヘリコバクター・ピロリ 感染確認の検査 |
30-35歳 | 感染あれば除菌 | |
上部消化管内視鏡検査 | 30-35歳 | 1-3年 | 胃癌リスクの高い集団、または胃・十二指腸癌の家族歴がある場合に考慮 | |
尿路 | 検尿(または尿細胞診) | 30-35歳 | 1年 | MSH2バリアント、または尿路上皮癌の家族歴がある場合に考慮 |
横にスクロールできます
がん種 | 検査方法 | 開始年齢 | 間隔 | コメント・備考 |
---|---|---|---|---|
大腸がん | 大腸内内視鏡検査を推奨 | MLH1/MSH2/EPCAM :20~25歳から または家系内診断年齢が25歳未満の場合は2~5年前から MSH6/PMS2 :30~35歳から または家系内診断年齢が30歳未満の場合は2~5年前から |
MLH1/MSH2/EPCAM :1~2年 MSH6/PMS2 :1~3年 |
|
子宮体がん | 子宮内膜組織診を考慮 経腟超音波を考慮 |
30~35歳から (経腟超音波は閉経後女性) |
1~2年 | リスク低減術:子宮摘出術を検討 ※PMS2はわずかにリスク上昇 |
卵巣がん | 経腟超音波・CA-125検査を考慮 | - | - | MLH1/MSH2/EPCAM: リスク低減術:卵管卵巣摘出術を個別に判別 MSH6:RRSOは十分な根拠がない PMS2:サーベイランスの延期等の考慮 |
尿路上皮がん | 尿検査を考慮 | 30~35歳から | 1年 | ※家族歴のある場合 ※MSH2の場合(特に男性) |
胃がん ・小腸がん |
上部消化管内視鏡検査を考慮 (初回検査時には、胃の近位部および遠位部のランダム生検を行い、 H.pylori自己免疫性胃炎、腸管形質転換の有無を評価) ピロリ菌検査を勧める |
30~40歳から | 2~4年 | ※上部消化管癌の家族歴や高リスクの内視鏡所見 (不完全または広範な胃腸管形質転換[GIM]、胃または十二指腸腺腫、異形成を伴うパレット食道など)がある場合: サーベイランスを30歳より前に開始and/or間隔を2年より短くすることが考慮される |
膵がん | MLH1/MSH2/EPCAM/MSH6: 造影MRI/MRCP and/or EUSを考慮 PMS2:- |
MLH1/MSH2/EPCAM/MSH6: 50歳または家系内診断年齢の10歳若い年齢 PMS2:- |
1年 | ※第一度または第二度近親に家族歴がある場合 ※PMS2で家族歴がある場合は慎重に評価 |
前立腺がん | 前立腺癌スクリーニングを考慮 | 40歳 | 1年 | ※遺伝子・家族歴に応じてリスク評価 |
乳がん | - | - | - | 一般的な乳がん検診 乳癌の既往歴・家族歴に応じた検診 |
脳腫瘍 | 症状あれば医師に相談 | - | - | - |
皮膚がん | 皮膚所見の診察を考慮 | 個々に対応 | 1~2年 | - |
参考文献
1)遺伝性大腸癌診療ガイドライン 2020年版
http://www.jsccr.jp/guideline/2020/hereditary_particular.html
2) NCCN Guidelines® Genetic/Familial High-Risk Assessment: Colorectal Version1.2023