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岡山大学学術研究院医歯薬学域 臨床遺伝子医療学分野のWebサイトです。

遺伝性腫瘍
Hereditary tumors

TOP 遺伝性腫瘍 リンチ症候群の診断

リンチ症候群

リンチ症候群の診断

遺伝学的検査

リンチ症候群は遺伝学的検査によってのみ確定診断されます。
リンチ症候群の原因遺伝子に病気と関わる遺伝子の特徴(病的バリアント)があるかどうかを調べる検査を遺伝学的検査といいます。遺伝学的検査は採血で行うことができます。(詳しくは遺伝性腫瘍と遺伝学的検査をご参照ください)
遺伝学的検査で病的バリアントが見つかった場合、リンチ症候群の確定診断となり、ご本人のがん予防、早期発見・早期治療だけでなく、血縁者の健康管理につなげることができます。
当院でも、リンチ症候群の遺伝カウンセリング、遺伝学的検査について相談することができます。
遺伝カウンセリングの予約方法や費用は下記URLをご確認ください。


マイクロサテライト不安定性(MSI)検査と
ミスマッチ修復タンパク質の免疫染色

マイクロサテライト不安定性(MSI)検査とミスマッチ修復タンパク質の免疫染色はリンチ症候群の可能性が高いかどうかを知ることができる、絞り込みの検査と言える検査です。いずれもがんの組織を用いて行われます。リンチ症候群の確定のためには、遺伝学的検査が必要となります。

<MSI検査>

私たちの体ではたくさんの遺伝情報が働いて体を作ったり体の機能を整えたりしています。この遺伝情報はA・T・G・Cという4つの塩基をもったDNAで作られています。
細胞分裂でDNAがコピーされるとき、ある一定の割合で塩基に変化が起こることがあります。その変化を修復する機構として、ミスマッチ修復があります。ミスマッチ修復に関わる遺伝子として、リンチ症候群の原因遺伝子であるミスマッチ修復遺伝子がありますが、これらの遺伝子に病的バリアントがあると修復機能がうまく働かず、変化が蓄積されていきます。
マイクロサテライトとよばれる、1~数塩基の繰り返し部分では、修復がうまくはたらかない場合、繰り返しの回数が変わることがあり、それを調べる検査として、マイクロサテライト不安定性検査(MSI検査)があります(図2)。
リンチ症候群では、修復機能がうまく働かず、多くのがん細胞でマイクロサテライト不安定性がみられるため、MSI陽性(MSI-High)を示すことが考えられます。
MSI検査を受けて、MSI陽性と分かった場合には、リンチ症候群の可能性が考えられます。


図2 マイクロサテライト不安定性(MSI)について

<ミスマッチ修復タンパク質の免疫染色検査>

私たちの体内では、遺伝子の情報をもとにタンパク質が作られ、体を作ったり、体の機能を整えたりしています。ミスマッチ修復遺伝子の情報からミスマッチ修復タンパク質が作られ、そのタンパク質がコピーの際に生じた変化を修復するように働いています。
ミスマッチ修復遺伝子に病的バリアントがあると、ミスマッチ修復タンパク質がうまくはたらくことができず、変化が蓄積されていきます。免疫染色検査は、これらのタンパク質が機能しているかどうかを調べる検査です。免疫染色でタンパク質が染色されない場合には、リンチ症候群の可能性が考えられます。